動摩擦係数

生きています

再生

私は一度停止したことがある

停止する瞬間を人に捉えられていた

私はその人のことを覚えている

その人は私のことを覚えている 

その近しい人によって私は停止された

 

私は一度、停止されたことがある

私にとっての物語はそこで終わった

その人にとっての私の物語もそこで終わった

しかし、その人の中で私は生き続けている

その周りの人の中で私は生き続けている

 

私は一度、停止してしまった

それでも、もう一度、あの人に会いたい

その思いだけは残っている

 

 

どうやら準備が整ったようだ

私は再び動き出す

再びあなたの前に蘇る

私は今、再生される

 

 

光源が私の方を向いている

白い

明るい

眩しい

私は必死に明るさから目をそらす

周りは暗い

何も見えない

 

徐々に眩さに目が慣れてくる

観客がいる

私はその中を探す

しかし

その中にその人の姿はない

 

ああ、今回もダメか

結局今回も会えないのか

あの人がいないのは

これで何度目だろう

 

今回のセッションも

残り時間がわずかだ

幕引きだ

エンドロールだ

 

私は停止される

そしていつかまた再生される

 

この先

私を最初に停止したあの人に会うことは

できるのだろうか

 

本当はその答えはもうわかっている

 

毎回同じ答えにたどり着くのも

また、再生なのだから